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2018年5月 9日 (水)

ハマキチョッキリの仲間の揺籃/イヌシデ・アカシデ

 当地の公園や近隣の林地にあるイヌシデやアカシデ(いずれも雌雄同株;雌雄異花)の雄花序は葉の展開に先立って3月中旬には展開が始まり、続いて花序が垂れ下がるようになります。http://kuromedaka-saitama.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-a8c3.html

 その後、下旬には雌花序が展開、垂れ下がるようになります。
 花は、葉の展開と同時の3月下旬~4月はじめに開花します。
 4月はじめ、雌花序(果穂)が垂れ下がった頃には、先に伸びきっていた雄花序の大部分は脱落して地面に散り敷くようになりました。

■イヌシデとアカシデの比較:
 以下、いずれの画像も左側がイヌシデ、右側がアカシデです。(また全ての画像はクリックで拡大します。)
 ・葉の形状比較。
 葉の先端が尾状に尖るのがアカシデ、短く尖るのはイヌシデ。
 (但し、場合によっては尖り具合の差異が判然としない場合もありますが、多数観察すれば区別ができます。)1blg

2

 
 ・3月下旬の雄花序/花の様子:
 (左イヌシデ、右アカシデ)33

 
 ・4月はじめの雌花序(花穂)の様子:
 (左画面黄緑色のものイヌシデ、右画面2本アカシデ)44

 
 ・イヌシデとアカシデの樹皮比較:
 (左イヌシデ、右側アカシデの方が滑らかな感じ)5

 
■「ハマキチョッキリ」の仲間が、イヌシデやアカシデの葉を複数巻き合わせて作った”葉巻物”揺籃:

 ・4月中旬、若葉が展開したばかりの林地に混生しているイヌシデやアカシデの樹冠下に、大量に落下したイヌシデやアカシデの雄花序に混じって、点々と複数の葉を重ね巻き合わせた筒状の”葉巻物”が落ちていました。

 
 腰を下ろして手の届く範囲で拾い集めてみると、新鮮な若葉を巻いて切り落とされたばかりのものから、切り落とされて時間が経過したものなど、また大小様々です。Img_066612_2

 「ハマキチョッキリの仲間」が作った揺籃です。
 それは特に珍しいものではなく、毎年、若葉の頃にはごく普通に観察されるものです。

 ”今まで余計なことはしない”、ということで開けて見たりしたことは一度もありませんでした。
 この度、作製者には申し訳ないのですが、今回限りということで、いくつか拾い集め、新鮮で大きな標品を選んで巻き戻して中をのぞいて見ました。

 3点ほど観察したイヌシデ、アカシデいずれでも、巻き合わせられた葉の枚数や、サイズなどにはバラツキがありましたが、最後の葉に(産みつけられ)つつまれていた卵は全て1個だけでした。
 (1個の揺籃に複数産卵されることもあるそうですが。)

 きっちり巻かれた揺籃をまき戻すのは簡単ではなく、巻き込まれた葉の1枚ずつの端は糊付けされているかと思うほどしっかり付いていました。
 そこで落ちていたササ竹の軸を”爪楊枝”代わりにして、葉が破れないよう慎重に開いていきました。
 以下の画像は、葉柄の長いアカシデの葉4枚を重ね巻きして作られていた揺籃の観察例です。
 巻き戻してみて、重ね合わせは互生している葉を単純に茎に、ついている順に巻くのではないことも分かりました。

 ・アカシデ製。葉が1枚がついた茎ごと切り落とされていた新鮮な”葉巻物”揺籃:
 葉巻の長さは5cmほど。
Img_07631

 
 ・1枚目の葉を巻き戻す。続いて2、3枚目と巻き戻していく。Img_0764ct

Img_0765

Img_0766

 
 ・最後の4枚目を慎重に開いていくと、葉の一番端の巻きはじめたところに卵が1個、産みつけられていました。
 その近くに小孔が開いていましたが、産卵のためにあけられたものでしょうか?Img_076741

Img_0772ct

Img_07721

 
 ・観察後、元のように巻き順を確認しながら巻き返すのはもっと大変で、途中でどうしてもグズグズに緩んでしまい、完全に復元できませんでした。(画像一番手前の標品)Img_0777

 ニンゲンなのに小さな昆虫チョッキリより、チョッキリ技能が劣るのです。
 申し訳ないことでしたが、卵が無事に育つことを祈るのみ。

 
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 残念ながら、揺籃を作製して切り落とすまでの作業を観察することは難しいです。
 多くの場合、揺籃の大半は高木の見上げても葉陰で見えないところで作られていて、出来てから地表に切り落とされたものを観察するだけですから。

■切り落とされずにぶら下がっていた揺籃: 
 ただ、今回はじめて1例だけ、林縁の遊歩道に自生したと思われる小木のイヌシデで、ちょうど(歩いていた)目の前に、カット作業は施されてはいたものの、切れずにぶら下がったままの、まだ新しい葉巻物を見つけました。Blg

 時間が経てばやはり自然にちぎれ落ちるような気がしましたが、それはともかく、このような機会にうまく遭遇できれば、「作成者のお姿」確認と、その作業工程を観察できるのですが、チャンスは少ないのでしょうね。

 
※雑記:
 ”製作者”の「ハマキチョッキリ」情報を少し調べて見ましたが分かりませんでした。 
 それで無関係かも知れませんが、参考情報として:
 ・体長3~5mmほどで、年1回春出現してシデやコナラ、その他の様々な葉を巻く「ファウストハマキチョッキリ」という小型種の仲間がいるそうです。
 揺籃の中で孵化した幼虫は終齢幼虫まで育つと揺籃から脱出して土中で夏を越し、秋に蛹化、羽化してそのまま(土中で)成虫越冬し、翌春に姿を現してしばらく後食したのち繁殖活動に入るというライフサイクル。

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