ガガイモの舟(天の羅摩の船)/古事記 (付記M8.8チリ地震)
『古事記』は、八世紀(奈良時代)の初頭に(異説もあるそうですが)誕生した現存する日本最古の歴史書。天地の始まりとともに誕生した神々と、列島の一部を統一して古代国家を現出させた天皇たちにまつわる伝承の三巻構成の物語。
上巻には、天地のはじめ、天の世(高天原)から十二代の神々が現れて、地の世界に国を造り整えていき、神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト:後の初代神武天皇)が生まれるまでが語られています。
この中に、先祖の神々が手がけたものの中断されていた地上の国作りを、六代目の大國主神が引き継いで進めるに際して、ガガイモの船に乗ってやってきた少名毘古那神(スクナビコナノカミ)、またその後やって来た大和の土地神の協力を得て完成させたという記述があります。
「故、大國主神、出雲の御大の御前に坐す時に、波の穂より、天(あめ)の羅摩(かがみ)の船に乗りて、~中略~少名毘古那神~以下略」
曰く、ある時、出雲の美保の岬にオオクニヌシが立っていると、ガガイモの実の舟に乗って蛾の皮を着物にした小さな神様がやってきました。誰も名前を知りませんでしたが、ガマガエルが「久延毘古(クエビコ)が知っているでしょう」というので、訪ねると、「神産巣日神(カミムスヒカミ)の御子、少名毘古那神ぞ」と答えました。
このクエビコは案山子(かかし)なので動けないけれど、世の中のことはなんでも知っている神様です。
オオクニヌシが神産巣日神にそのことを訊いてみると、「我が手の隙間からこぼれ落ちた子なり。スクナビコナよ、オオクニヌシと兄弟となって国造りをせよ」と仰せがありました。それで二人協力して国造りを進めましたが、やがてスクナビコナは、常世の国(水平線の彼方にある、神々の住まう永遠の世界)へと渡っていきました。
一人になって困っていたオオクニヌシが、「どうやって一人でこの国をつくれよう。誰が手伝ってくれるのか」とつぶやいている時、海上を照らしてやって来る神様がありました。この神は大和の御諸山(三輪山)に祀られた神(大物主神)で、その協力を得て国作りが完成した、ということです。
時季はずれの2月、枯れ草原に取り残されていたガガイモの袋果をしげしげと眺めるにつけ、
ふと思いついて、種髪の種を少名毘古那神に見立てて乗せたガガイモ袋果の舟をメダカ水槽に浮かべてみました。
こうして眺めてみると神代の世界を彷彿とさせる趣を感じないでもありません。
なお、古くから、大阪でも有数の薬の街として栄えてきた道修町に「少彦名神社」という神社があり、「スクナビコナカミ」が、薬の神様として祀られて「神農さん」という別の名前で親しまれています。
神農さんは大阪の1年の最後を飾る「留めの祭り」として毎年11月22・23日に催され、賑わいを見せています。私もその昔に何度か訪れたことがあります。
付記:
神代のふるごときに呆けていたら、突如また襲ってきた巨大地震。先の1月12日発生したハイチの地震大災害の記憶もまだ新しい2月27日午前、今度はチリで起きたM8.8の巨大地震。
そして翌日、海の向こうから日本にやって来たのは太平洋岸全域にわたる津波でした。三陸地方の久慈では120cmも。
http://j-jis.com/world/worldmap.shtml http://wcatwc.arh.noaa.gov/2010/02/27/725245/25/ttvu725245-25.jpg
http://wcatwc.arh.noaa.gov/
日本でも近い将来発生が確実視されている巨大地震に対する国造りは急務です。いまさら神様にはお願いできません。
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