ツクシ、胞子と弾糸の運動
だんだん暖かくなり春を実感できるこの頃です。
スギ花粉飛散もピークを迎える時期になりました。
晴れて少し風がある日、”完全武装”して散歩に出ると、用水路の水鳥たちもまだのんびりしている様子。
雑草がバーナーで焼かれて邪魔者がいなくなった田んぼの畦斜面にはツクシがいっせいに伸び出していました。
春の景色です。
まだ青みが残っているツクシの頭部を指先で突っつくと、黄緑色の”けむり”がポッと立ち上がります。
胞子が飛び出しているのです。
2、3本摘んで帰り、胞子を観察してみました。
乾いたスライドグラスの上で、摘んできたツクシの頭部をトントンとたたくと、黄緑色の胞子がたくさん落ちてきます。
カバーグラスはかけないでそのままそーっと顕微鏡で覗いてみました。
●ツクシの胞子:
丸い胞子には2本の弾糸が付いています。
中央で交叉しているので4本の手足にも見えます。
実に様々な恰好で、踊っているようにも見えます。
(倍率:×150倍)
そこに、静かに”ハーッ”と呼気を吹きかけると、弾糸がクルクルッとすばやく巻きはじめます(写真左側)。
しばらくするとまた伸びます(写真右のほう)。
とても敏感な反応です。踊るツクシの胞子、です。
次にカバーグラスをかけ、隙間に水をしみ込ませてから再び検鏡してみました。
2本の弾糸は完全にぐるぐる巻になっていました。
カバーグラスの間に入った気泡を押し出すために少し上から押して動かした後では、一部の胞子が潰れ、また螺旋状に巻いた弾糸がはずれていました。
(倍率300~150倍)
あらためて、乾いたスライドグラスに胞子を載せて、顕微鏡にセットし、湿度を感じると胞子の弾糸が巻き、湿気が去ると伸びて、胞子の集団が”踊る”様子を動画にしてみました。
初期の静止画面はこんな感じです。
デジカメ動画モードをスタートさせ、スライドグラス上の胞子集団に、間欠的に、静かにハーッと息を吹きかけます。
息を吹きかけた瞬間、まるでアリのように見える胞子の集団がいっせいにワッと動いて塊をつくります。
息を吹きかけた”気流”で動くのではなく、呼気中の水分に反応して弾糸が巻きつき運動を起こしているのです。
巻いた弾糸は呼気が去ればすぐに伸びて、また集団はほぐれて広がります。
この繰り返しです。
最後に少し長い時間続けてハーッとしたままにすると、弾糸が完全に巻きついてしまった様子で、それ以上は胞子集団は動かなくなりました。
少々間延びした単調な動画です。
濡れると弾糸が巻きついて、乾くと足を伸ばして広げる、これは天気の良い日に遠くまで胞子を飛ばすという戦略なのでしょうか。
植物もよく考えているのですね。
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補遺:
電子顕微鏡専門家の撮影による高度な科学的映像記事があります。
下記URLです。
なおハイパーリンクはしておりませんから、ご覧になるにはURLをコピーして、インターネットブラウザに貼り付けてアクセスして下さい。
★ツクシの中に小人が! ツクシの採取と観察
http://www.technex.co.jp/tinycafe/discovery17.html
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