南アルプス北岳(3,193m)登山(2日目)
北岳登山2日目:
寝不足気味であまり食欲のわかない5時半の朝食(ご飯と汁のお代りOK)を済ませ、昼食のお弁当を受け取り6時10分出発。この日も好天でした。
ただ少し風があり、小屋の人の話で、”ここでこの風では、上はかなりキツイですよ”、と言われていましたが、結果はそのとおりでした。
なかなかエンジンのかからない体には辛い、草すべり(と呼ばれる白根御池から小太郎尾根まで、約500mのガレた斜面)の直登コースを一歩一歩踏みしめ登ります。
花の季節ならば周りは一面のお花畑のはずですが、この時期、花数は少なく、目に付くのは背丈が大きく伸びて花後に熟した種をいっぱいつけ茶色にみえるボウフウ。
急ぐことなく、少しの頑張りで急登の草付きの斜面が終わり、さらに登って行くと小太郎尾根の稜線が近づいてきます。
そして前日”散策”で行ってきた大樺沢右俣から登ってくる道との合流点には8時過ぎに到達し、そこから更にジグザグ道を登りきると稜線に出ました。
上から降りてきた人から、”尾根筋は強風です、飛ばされそうでした”と言われたとおり、しばらく前進するとかなりの強風を伴ったガスが叩きつけるように体に当たるようになりました。
ほどなく小太郎尾根分岐点(8時27分)へ。この先で防風、防寒を兼ねて雨具を着用してから北岳肩の小屋方面への稜線を辿ります。
しばらくの間はガスが激しく流れて視界不良でした。そして稜線の右側を巻いて行くルートの幾つかの小さなコブを越えたところで、ほんの一瞬ガスが切れて晴れ間がのぞき、北岳山頂付近が見え、思わずオーッと声が出るほどるの光景が見られました。
その後しばらくで、2日目宿泊の北岳肩の小屋(3,000m)に着きました(9時12分)。下の方は晴れてきましたが、見上げる山頂方面はガスの中です。
小屋の前のベンチに腰をおろして休憩と早めの昼食のお弁当を平らげました。
一息ついて、まだ充分な時間があるので、荷物は小屋に残し10時10分、とりあえず北岳頂上往復に出発。小屋の付近でもかなりの風があり、また下は晴れましたが、上の方やはりはガスに包まれたまま。
小屋を出るとすぐに風が強くなり、ガス混じりの風に煽られながら岩屑の急な道を登って行くと、だんだんガスが濃くなります。
やがて右手に野呂川上流の両俣小屋から登ってくる道の合流点が出てきて、このあたりから一層ガスが濃くなり視界が悪くなりました。
さらに登り、手前の岩峰を越えると、突然のように眼前に北岳山頂が現れました。残念ながら頂上はガスに閉ざされていて展望は全くありません。また頂上に我々以外に人影もありませんでしたので、とりあえず交代で記念写真を撮り合いました。
(帰宅後、晴れていれば見えたはずの”北岳山頂からの定番風景”のモノクロ写真を、古いアルバムから探し出してスキャナーで取り込み貼ってみました。むろん、稜線には現在の立派な北岳山荘はありません)。
岩稜に出るとガスと強風に曝されて寒いのですが、頂上一角の岩陰ではほとんど風を感じず、寒さも全く感じません。時間には十分余裕がありましたので、そこでしばらくガスが晴れるのを待つことにしました。
なお、タフなスポーツマンの義弟君は山梨100名山の一つ「小太郎山」に行ってくる、午後4時頃までには肩の小屋に戻るからと言い置いて、11時半前一人で霧の中を下山していきました。
奇遇:
山頂でガスの晴れ間を待つことおよそ1時間半。結局、時折薄日がさしてわずかに目前が明るくなる程度で、風景が見えることは皆無。
この間、何人かの登山者が、同じような思いで、北岳山荘からも登ってこられましたが、これではだめですね、と言葉をかわしてそそくさと戻って行かれました。
我々も、いつまでいても仕方ないから降りようか、と言っていたとき、一人のおしゃれな年配の男性の姿が現れました。
八本歯のコル経由で登ってこられたとのこと。存じ上げませんでしたが、水泳スポーツ界では著名人の江口幸夫さん(76歳)(http://www.tokyo-swim.org/formation.html)
お伺いしたところでは、この日も単独・北岳日帰り登山で、広河原から八本歯のコルを経て、実に通算176回目の北岳登頂、ということです。(以前の記録はhttp://www.sannichi.co.jp/MAIL/ASHIYASU/061101/index103.html)
そしてこれまでの登頂記録が書き込まれたノートに、新たに当日の登頂記録を追記されてから、頂上で居合わせた人に証人として署名をお願いしているが、よろしいか、とのこと。もちろん喜んで3名の記名をさせていただきました。
なおまた、余談ながら、昔登った時の北岳の標高は、3,192mと承知していたのですが、その後もっと高い岩場があるなどの情報や指摘があり、平成16年10月3日、国土地理院関東地方測量部のメンバー4人の方々が再測定した結果、以前の三角点から南南西へ24mの位置に(北岳山荘寄り)ある岩盤が、三角点より80㎝高い事が確認され、北岳の標高は現在の3,193mに改訂されたということです。
そして奇しくもその測量当日にも、江口さんは北岳に登頂され、ちょうど山頂に居合わせた4人のメンバーの代表の方から、登頂証明のサインを得られたそうです。(その記録写真記事も拝見しました)。
ノートの新しい記録ページに記名後、一緒に記念写真を、という申し出に快く応じていただき、私がシャッターをと構えた時に、ちょうど単独行の男性が登ってこられ、シャッターをお願いすることができました。もちろん、その男性の記念写真は私がシャッターを押させていただきましたが。
江口さんは、”明日も予報では天気が良さそうだから、また日帰り登山しますよ”、と言って身軽な足取りで霧の中に下山して行かれました。
当方は驚くやら感心するやらで、まだしばらく頂上にとどまっていましたが、12時20分頃、諦めて肩の小屋まで戻ることにしました。
ところが、です。ほとんど下りきった頃から、どうやら天気は回復の方向になってきました。そして午後1時半頃から、ゆっくりではあるもののガスが切れ始め、天候回復の兆しが明らかになってきたのです。
北岳山頂にかかっていたガスも取れはじめ、この頃から数名の登山者が肩の小屋から頂上目指して出かけられました。
また悠揚迫らぬ山容の千丈ヶ岳(3,032.6m)も綺麗に見えるようになりました。
午後2時過ぎには、鳳凰三山も実に見事に見え、3時頃には北岳山頂もかなりくっきり見えるまでに天候は回復しました。
ただ甲斐駒ケ岳だけはどうしても雲に隠れたままで、その手前には晴れた中に小太郎尾根が綺麗に見えていたのですが、なんとか”駒”も晴れないかと見守っていた時に、なんと小太郎山に単独で向かった弟君が予定時間より1時間も早く帰ってきたのです。
少し霞んではいましたが、青い富士山も浮かんでいるのが見えるようになりました。”こんなにいい天気になったのに、頂上にはいかなかったんですか”、と元気な弟君にはいわれたのですが、ともかく無事帰還をビールで祝杯。(後で思えば、行けばよかったか、と)。
なんとなく決断できないで動かなかったのは、先の江口さんから、今日の天気なら3時過ぎくらいから肩の小屋で”ブロッケンの妖怪(ブロッケン現象)”が見られるから、ぜひ楽しみに待ってみてください、と教えられていたことがあります。
そして待つこと1時間、現れました。午後4時過ぎに、太陽を背にした自分の前面にガスのスクリーンが出来、そのスクリーンに見事、”ブロッケンの妖怪”が出現したのです。丸い虹の輪の中心に、腕を広げた自分の影が現れました。
4人がそれぞれの「ブロッケンの妖怪」をカメラに収めて大満足。もちろん見られたのはごく短時間で、しかもその時間に、そこに居合わせた人達だけですが。
北岳山頂方面はますます良く晴れ、仙丈ヶ岳はガスに覆われるようになってきました。同時に気温も下がってきて防寒着なしで外にいたのでは寒くなり、小屋に戻りました。そして早い夕食です。運動量が多くないのでご飯も盛り切りで充分。
食後、防寒着を着てまだ明るい外に出てみると、山頂には青い空が広がり、山肌には傾いた陽の光があたり、美しい光景です。
そして13夜の白い月がぽっかり浮かび、雲海には富士山も浮かんでいました。
やがて太陽が沈むと、黒い雲の波の上空があかね色の夕焼けになって、また美しい情景が見られました。
小屋に戻り荷物を整理して寝る準備です。(つい先日は大混雑で、布団1枚のスペースに3人!、寝かされたということでしたが、もう宿泊者も少なく、布団1枚のスペースに一人割り当てがあり、それだけでも幸せな気分に)。
明日の朝も早いので、早めの就寝、と言っても普段の夜更かし、朝寝坊のバイオリズムには抗しがたしでした。
終夜、強風が音を立てていました。19:30、お休みなさい。
(続く)
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