2010/12 天空列車で行くチベットへの旅⑧ 5日目、ラサ郊外観光
5日目:
ポタラ宮広場:
午前中に、ラサ市内とメインのポタラ宮広場を見学。ポタラ宮を巡る巡礼道には早朝から大勢の巡礼者がマニ車を回しながら歩いています。ポタラ宮近くの駐車場から巡礼道、車道を横断して広場まで歩きます。
この広場は巡礼道と車道を隔てた南側にある広場で、2005年のチベット自治区成立40周年に合わせた改修工事で整備されたそうです。
”天安門広場”風のだだっ広い広場で、ポタラ宮全景を正面に見る写真スポットではありますが、巡礼者は訪れることはなく、観光客のいないこの時期には人影もなく寒々とした雰囲気でした。観光シーズンには”宗教行事は除く”大きな催し物が開かれるということで、賑わうのでしょう。
2003年に印刷された絵葉書の風景と比べてみると、違いは歴然です。チベット宗教的雰囲気は消され、観光施設に特化する近代化・開発が進んでいるのです。いずれはポタラ宮内部の観光は許可されなくなるかもしれないと聞きましたが、将来はどう”発展”するのでしょうか。
(写真上から、①2003年絵葉書、②2005年整備ポタラ宮広場、③広場正面のポタラ宮、④塔屋に君臨、翻る五星紅旗、⑤広場から車道を隔てた向こうの巡礼道を行く巡礼者、⑥巡礼道を行く巡礼者(バス車中から))
カンパ・ラ(峠):
ラサから、最高地点4,800m近くの高地までバスで登ります。バスに戻り、巡礼道を埋める巡礼者を車窓に目にしながら、ラサ市区から出てラサ川沿いに中尼公路(318号線)を南下します。チュシュ(曲水)を出たところで左折し、ヤルツァンポ河の橋を渡り、その先で右折して山道に入ります。
うねうねとカーブの連続する急な舗装道路が、冬枯れで茶色一色の大地を縫って登っていきます。道路は登るに連れて損傷がひどくなっていて、あちこちでパッチワーク風に部分補修工事が進められていました。
補修するはしから壊れていくという感じで、道路整備、維持管理はさぞかし大変だろうなと思います。工事で出た瓦礫はパワーシャベルの機械力ではなく、薄い空気の中で、手にしたシャベルですくい上げ、工事用ダンプ車の荷台に放り上げるチベット人作業員の姿には、驚き以上の何かを感じてしまいました。
大型車が故障して止まっていたり、超大型のタンクローリーが這うようにゆっくり登っていたり、時には思わず首をすくめるような光景も眺めながら進むと、タルチョのはためく石塚(オボ)が見えてきます。これが標高4,749mのカンパ・ラです。ラというのはチベット語で峠です。
カンパ・ラを越えてしばらくで標高海抜4,770m地点に到着します。バスを降りると強い紫外線が降り注ぐ中、さすがに空気は刺すように冷たく寒いです。それを忘れさせるように青く美しいヤムドゥク湖(標高4,250m、チベット仏教三大聖湖の一つで、”トルコ石の湖”といわれる青い湖)が眼下に眺められました。
総面積は621平方キロメートルで琵琶湖より少し小さく、水深は最深部で60m、周囲の山から流れこむ雪解け水が水源となっています。
そして遠くにネンチンカンサン峰(標高7,191m)を眺望することができました。
(写真上から、①ヤルツァンポ河を渡る、②道中では、舗装観光道路など迷惑な放牧ヤクや羊の群れを随所に見かけます。③山岳道路を登る、④タルチョに埋もれる石塚(オボ)、カンパ・ラ付近、⑤峠越え、眼下に望むヤムドゥク湖、⑥ネンチンカンサン峰遠望)
改めてチベット大自然の美しさに感動しました。なお夏期の観光ハイシーズンには、緑の草原が更に美しいコントラストを見せるそうですが、空には雲が湧いて、ネンチンカンサンは見えないことがほとんどだそうです。
ここまで来るのに、道路補修工事現場の徐行などの道路事情もあって、所要時間はラサから約3時間弱ほどでした。
舗装道路が出来る前は6時間位かかったそうですから、道路開発/建設の効果は偉大です。ただ観光開発や関連事業に直接的には無縁の地元の人々は又違う思いで見ているのでしょう。
ヤムドゥク湖:
カンパ・ラ越えからしばし雄大な景観を楽しんだら、バスでヤムドゥク湖畔まで下ります。湖畔のレストランで昼食。傍にはトイレの番犬?、ヤク、鶏なども暮らしていました。
昔、湖は冬季に全面結氷し、人もヤクも車も渡ることができたそうですが、現在は温暖化のせいで、そうはならない、ということでした。こんな所にも影響が出ているのですね。
(写真上から、①湖畔からレストラン、峠方面を望む、②レストラン周りに暮らしている動物。元気ですね。③無愛想な国定自然保護区の看板、④タルチョの向こうにネンチンカンサン峰、⑤さざ波の立つ湖水面。水辺だけは氷がありました。)
昼食後、往路を戻ります。
民家を訪問:
途中、チベット遊牧民の民家を訪問しました。正直のところ、観光施設でもない一般家庭を覗き見することには多少戸惑いもありましたが、家族の人々は(もう慣れていることもあってか)ごく自然に、つくりものではない笑顔と態度で迎えて下さり、安堵の気持ちになりました。
門をくぐると広い前庭があり、庭を取り囲むように、納屋ふうの建物がめぐらされて、その一角には解体されたヤクがぶら下がっていて、その前にはヤクの首が無造作に金盥に置かれていて、その隣の家畜小屋にはヤクがいて、鶏がいて、そして家屋正面右奥には、これまでも街中、道中でよく見かけた太陽光を利用した湯沸かし器があって。
ヤカンに触ってみると火傷しそうなくらい熱くなっていました。これこそ故障なしの省エネ・ソーラーパワーです。
母屋は大きな建物で、室内には伝統的な調度品が備え付けられ、電化製品も揃っていて、隣接する台所で早速、奥さんがバターと塩の入ったバター茶をミキサーで調製して出してくださいました。おいしいものでした。
(あえて気になったことは、入り口の上部に魔除けとして置かれたミイラ化したヤクの頭部ではなく、その横に高く掲げられた五星紅旗。国家の政策のおかげで、こんなに豊かな生活をしています、というPRの協力をさせられているのではないか、と。考え過ぎでしょうか)(写真はクリックで拡大します)
お礼を言っておいとましてから、民芸品店にトイレ休憩を兼ねて立寄り。その後、今日最後のネタン大仏見学に。
ネタン大仏:
往時、通過した318号線沿いの小山に掘りこまれたネタン大仏(崖に彫られた磨崖仏で、彩色された数体の観音像です)を見学。
最も大きいのは一番奥に彫られた釈迦牟尼像で、高さ9.8m、幅7.9mと、比較的小ぶりではありましたが、つくられた時期は11世紀ということでした。
これまでの寺院で、お参りしたときに奉納するつもりで、結局ずっと持ち歩いていたカターを、ここで、やっと収めてきました。おかげさまで高山病にならないで。(まあ、頭の中にヤギがいますから・・)
ネパール料理の夕食後、ホテルへ。(拉薩泊)
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