北インドの旅(2011/3初旬)(その4)
北インドの旅4日目:
ベナレス見学後→カジュラホへ:
◯再びガンジス川:
早朝5:30発、再び手漕ぎボートに乗って日の出と共に行われる朝のガンジス川沐浴風景を見学。この日も曇天で日の出は見られなかった。
異臭が漂うガートの階段のあちこちに大勢の巡礼者が横たわっている。ここで寝たのだ。牛がいて、犬もいる。汚物を踏んで滑らないよう、足元を懐中電灯で照らしながら水辺まで降りて、手漕ぎボートに乗る。
まず上流に向かう。日の出前、照明の中にガンガー川畔の光景が浮かび上がり、昨夜のプージャ(お祈り)が脳みその裏に浮かぶ。
知る人ぞ知る「久美子の家」も見える。岸辺の洗濯場で洗濯をする人々。昨日のお祈り場はやはり人で埋まっている。沐浴をする人々。沐浴前の信者にお祈りをさずける僧侶の姿。沐浴の光景を目の当たりにしながら、ボートは昨夜の火葬ガートに向かう。
ガート岸辺には幾つもの遺灰の山がある。ここで遺灰は流されているのだ。Uターンしてボート乗り場に戻る。
あらゆるものが流れている。諸行無常の流れがある。犬の死体も目にした。葬式仏教徒には、ここで沐浴する元気はない。恐れ多いことだ。ただ、ガイドのSさんには、沐浴をするのに宗教、信仰は関係ありません、と言われた。(なお余計なお世話かも知れないが、ガンガーの水は相当に汚染されている。日本の海水浴場とはわけが違う。やはり別世界なのだ。)
ヒンドゥーの教えでは、ガンガーの聖なる水で沐浴すればすべての罪は浄められる。また死者は河畔に積まれた薪で火葬にされ、その遺灰をガンガーに流せば輪廻のサイクルから開放されて解脱が得られて、ヒンドゥー教徒最高の幸福が得られるとされる。
そのためこの町には年間何百万人もの巡礼者が訪れ、なかにはここで死ぬのを待つ人もいるという。
異教徒がこのような文化を体験的に理解するには、しばらくこの地に滞在して、川畔の火葬を目の当たりにしながら、聖・俗すべてをのみ込んで流れるガンガーで沐浴三昧の生活を送ってみることが必要でしょう。
お人好しで騙されやすい無節操のニンゲンは、火葬ガートでうろうろしている”案内人”に騙されて、薪の上に載せられ灰にならないように気をつけながら・・・。
死生観、確立できていますか?、むろん、凡俗の私は×ですが。
ボートを下りてから、
○黄金寺院(ヴィシュワナート寺院):
聖都ベナレスの中心地、そしてシヴァ神信仰の中心地として全巡礼が目指す寺院がヴィシュワナート寺院で、その開基は5世紀にさかのぼるが、12世紀以降、イスラム教徒によって何回か移転と破壊が行われ、モスクに改造されてしまった。
そして現在ある金箔で覆われた黄金寺院は18世紀にモスクの一角に建立されたものである。
”異邦人”は、寺院を巡る細い路地を一巡するだけ。ここに行く前にカメラなどの持ち物は制限される。
ガンガーで沐浴したヒンドゥー教徒は、その後必ず、ガンガーの水を入れた壺を手に持ち、ヴィシュワナート寺院に向かう。寺院内にはヒンドゥー教徒しか入ることが許されない。
その奥まった細い路地を巡礼者に混じって通り抜けたが、その混雑、猥雑さは筆舌に尽くしがたい。
観光後、ホテルに戻り朝食、後、バスでベナレス空港まで向かう途中で、
○ドゥルガー寺院に立ち寄り:
旧市街の南側にあるドゥルガーは、シヴァの妃である女神。中には入れない。赤色の寺院を道路角から建物越しの見学のみで終えてから空港へ向かう。
ベナレス発11:15、空路カジュラホへ:
カジュラホ着11:55、まずホテルへ、そこで昼食。
ガンガーの冥界に迷い込んだような、言いようのない拘束感から解放され、現実の世界に戻ってきた、なにかほっとした安堵感があった。
午後カジュラホ市内観光:
【カジュラホ】:
19世紀(1838年)に英国人が狩猟に来て、ジャングルに埋もれている遺跡を発見した。 1986年世界遺産に登録されたカジュラホはデリーの南東約500km、インド中部に位置する古都。今は人口16,000人ほどの小さな村にすぎないが、およそ9世紀から14世紀にかけて一帯を治めていたチャンデーラ朝の庇護のもとに、最盛期には85にのぼる石造寺院群が建立された。
その後イスラム教による破壊の対象になり、現在そのうち25の寺院が保存されている。寺院群には、砂岩に刻まれたみごとな装飾彫刻が施されている。
彫刻の対象は、主だった神々、半神、ミトゥナ(男女交合像)に分けられる。半神にはディクパラ(八方向の守護神)、アプサラ(天女、踊り子でもある)、スラスンダリ(美しい天女)、ヴィディヤダラ(天使)、ガンダルヴァ(天上の音楽家)などがいる。
カジュラホが英国人によってはじめて記録に残された19世紀中頃から、寺院がエロティックな彫刻(ミトゥナ)で飾られているという、普通の概念では不自然とされることが、なぜカジュラホの寺院に存在するのかという疑問にいくつもの説が唱えられた。
バート大尉は、「非情に淫らで不愉快なものである。」と述べ、「彼らヒンドゥー教徒の聖なる創造物を冒涜する最も下品な物である。」と続けている。
カニンガム卿は、「気分が悪くなるほどわいせつだ。」と、エロティックな彫刻に付いて記録している。
そして20世紀初頭にはなぜそのような彫刻が多数あるのか、美術歴史家たちが解釈をこころみた。
今日のインドでは、少なくとも公共の場ではエロティックなものは注意深く排除されているが、ここには上記のように世界に有名なミトゥナ像(男女交合の官能的なレリーフ群)は、古代インドの性愛論書 『カーマスートラ』の教えとともに、豊穣祈願の思いが込めらたものとして認められているようだ。
そして現在は、紛れもなく、外貨を稼ぐ有望な観光資源になっている。
ただ有名になりすぎたミトゥナ像ではあるが、それは遺跡に残されたあまたの彫刻群の中で、ほんの1部(1/10)を占めるに過ぎない。寺院の建築に注がれたエネルギーと、そこに表現された躍動する生命感にあふれる彫刻群の創造力はやはりすばらしいものといえるだろう。
なお、カジュラホ寺院群の見学は英、仏、独、そして日本語の4ヵ国語を操るという現地の専門ガイドによるものだったが、強いて言えば、彫刻群の解説は、ミトゥナ像に偏っていて、ミトゥナ像を期待している向きには、そうしないと、実際、大量の彫刻群の中から自分でそれらを見出すことはとても容易なことではないからだろう。
”皆さまの日本では48手、インドのカーマスートラでは84手。ここにはそのうち72手が彫刻されている。だからインドの人口は増えたのだ”、と笑わせてくれた。
なお、ここには、ベナレスのガンガーで感じたようなスピリチュアルな空気はまったく感じられない。(KHAJURAHO ORCHHA Lustre.Roli 参照)
◯世界遺産:南の寺院群
ドゥラデオ寺院(1100年~1150年頃)は聖なる花婿(シヴァ神をさして)という意味の寺院。ここの彫刻は装飾に凝っているが芸術的な深みに欠け、同じモチーフの繰返が多いということで見学は省略。
そこから1km南のクダール川の少し南に位置しているチャトゥルプジャ寺院(1100年頃)へ。こちらにもスラスンダリと呼ばれる天上の美女の彫刻がたくさん見られるが、彫刻芸術が衰退期にあるときに建てられたため、その彫刻は型にはまっていて表情に乏しいという。
それでもはじめて見る者には、彫刻群は印象的で美しいものだった。ミトゥナ像はここでは説明がなく、見なかった。
◯世界遺産:東の寺院群
寺院群の中で、この地域にあるヒンドゥー寺院はこじんまりしたものが多く、それぞれの場所も離れていて、観光客も少ない。
一群になっているパルシュヴァナータ寺院、シャーンティナータ寺院、アーディナータ寺院はジャイナ教の寺院で、ここにはミトゥナ像は無いようだ。
パルシュヴァナータ寺院(10世紀中頃)はチャンデーラ朝時代に建てられたジャイナ教寺院の中でもっとも壮麗で最大のものだ。
神々のカップルやスラスンダリの見事な彫刻がある。外壁のアイラインを引くアプサラの姿はよく見られるモチーフだ。またダンスの前に、足首にベルの付いた足飾りをつけようとしているアプサラ、足に色をぬっている姿、さらにこの寺院にはいくつかの大変愛らしいスラスンダリの彫刻もある。
伝統的な馬とライオンのコンビネーション、象とライオンというめずらしいコンビネーションのサルデューラも見られる。
アーディナータ寺院(11世紀末)は、現在至聖所と入り口のホールだけが残っている。そのホールも後世に付け加えられたものだ。外壁にはスラスンダリや宙を舞うヴィディヤダラなどの彫刻がある。
ここではジャイナ教徒(裸足、白装束)が祈りを捧げる場面に出合うことがある。
夕食はホテルで。
(カジュラホ泊)
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今日(3/23)のメモ:
今日は朝から、早く起きろとナマズ通信3連発。ゆらゆらではなく、ガタガタガタと振幅の短いヤツ。
また、朝の計画停電は中止ということになりました。そして夕方8時前にもゆらゆらと。
やっぱりな、と思うのですが、昨日そして一昨日の雨で、大気中に漂っていた放射性物質が水道水源にも入り、乳幼児には水道水を与えないようにという報道がありました。小さいお子さんをお持ちのお母さんたちは大変です。
原発事故がなかなか沈静化に向かわないようだし、野菜農家などは風評被害に苦しめられています。
こんな情勢の中、世情にそぐわないブログなどやはり遠慮したほうがいいと言う気もして、明日からしばらくお休みにすることに致しました。
一刻も早く、何か明るい兆しが見えることを切望しながら。
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