白馬村の親海湿原に立ち寄る楽しみの一つはクジャクチョウに出会えるかもしれない、という期待でした。しかし今回、出くわしたのは、ガばっかり。しょうガないです。
蛾も蝶も同じ「鱗翅目」であり、どちらが余計にきれいとか、気持ち悪いとか一概には言えないのですから・・・
湿原沿いで日陰になった樹木の葉にいろいろなガがとまっていました。また湿地に生えたオトコエシの花にはキンモンガがいて、イラクサの群落には気持ち悪くなるほどたくさんのフクラスズメ幼虫が群がって葉を食害していました。
ユウマダラエダシャク:
日陰の木の葉に止まっていました。白色地に、灰褐色~褐色の斑紋があるシャクガ。幼虫は、マサキ、コマユミ、ツルマサキなどの葉を食べてちます。
大きさ(開張):40~50mm 、出現時期:5~6、8~10月 、分布:北海道・本州・四国・九州・沖縄 。
ニワトコドクガ:
日陰の木の葉に止まっていました。あまり特徴が目立たないガです。全体にクリーム白色で、前翅に褐色紋があるドクガの仲間。
山地・平地に普通で、灯火にも飛来します。幼虫食草:ニワトコ。カマツカなど。
大きさ(開張):30~42mm、成虫出現時期:6~9月、分布:本州・四国・九州。
シロツバメエダシャク:
こちらも日陰の木の葉に止まっていました。ツバメエダシャクには似た様な種類が多く、写真1枚では素人には判別が困難です。「みんなで作る日本産蛾類図鑑」も参照しながら、尾状突起の形、皺の様な細かい横筋(さざ波)の分布などからシロツバメエダシャク(→http://www.jpmoth.org/Geometridae/Ennominae/F000Ourapteryx.html )としました。
近似種のウスキツバメエダシャクに類似していますが、本種では前翅茶褐色筋2本の間にさざ波状の模様がありません。
幼虫食草はイチイ科のイチイ、キャラボク、チャボガヤ、イヌガヤ科のイヌガヤ、マツ科のトウヒなど。
大きさ((開張):36~54mm 、出現時期:7月、9~10月の2化性 、分布:日本各地。
オトコエシの花にキンモンガ:
湿原の林縁にオトコエシが白い花をつけていました。オトコエシは丘陵帯,山地の草原や道端に生える多年草です。
高さは60~100cmになります。分岐した茎の先端に花径4mmほどの白色小花を散房状に多数咲かせます。
名前はオミナエシ(女郎花:黄色い花)と対比させてつけられたもので、オミナエシに比べて強壮な感じがするからということです。実に翼状の丸い小苞が付いています。
花期は8~10月。分布は日本各地。
その白い花に、キンモンガが来ていました。
キンモンガ
一見、「キミスジ」という日本では南西諸島にしかいないというチョウに似ているようですが、当然別で、以前観察したことのあるキンモンガに似ているため、あらためてネット図鑑(→http://www.jpmoth.org/Epicopeiidae/F000Psychostrophia.html )を参照しました。
ぴったりの絵合わせはできませんでしたが、キンモンガは個体の色調や紋様の変異が多いということから、キンモンガとしました。
黒地に薄黄色の紋が目立つガで、昼間に活動し、翅を広げてとまっていることが多く、白い花にもよく来るという。
大きさ:(開張)32~39mm 、出現時期:6~8月 、分布:本州・四国・九州。
イラクサにフクラスズメ幼虫:
イラクサは、半日陰の湿潤地に生育する多年草です。茎や葉の表面・葉柄などに刺毛があり、触ると鋭い痛みがあります。葉は卵形で長さ5~15cm。縁には大きな鋸歯があります。
穂状の花序を形成して緑白色の雄花と淡緑色の雌花をつけます。
花期は8~10月。分布は本州・四国・九州。
群生したイラクサに、派手な色彩の大きなイモムシが群がっていました。まばらに毛が生えていて見かけは毒々しいものの、毒はありません。
フクラスズメ幼虫です。
脇腹をアップで見ると、気門がオレンジ色で、そのまわりが赤く彩られています。終齢幼虫は7cmほどになります。食草はイラクサ科の、イラクサ、カラムシ、ヤブマオです。
なお、和名は、丸っこくて毛に覆われた成虫のガが、スズメが冬の寒さに耐えるため、羽毛を逆立てて「ふくらすずめ」になっている様子に当てはめたもので、また”スズメ”とありますが、スズメガ科ではありません。

きれい?、気持ち悪い?
(完)