ムラサキケマンの種子散布
3月下旬、庭先の雑草溜と化して久しいプランターに、ムラサキケマンが一株生えていました。どこからかアリさんが運んできて播いていった種のせいでしょう。
ムラサキケマンはケシ科の2年草でフィールドでは春早くから赤紫色の花を総状につけ目立つ存在ですが、プロトピン(Plotopine)を含むため有害植物です。
幼植物の頃はにんじんの葉のような形をしていて、山菜のシャク(山人参)と間違われたりして中毒する例もあるようで要注意です。
それはともかく、いつもは庭木の下に隠れるように芽生えてくるので、見つけしだい草取りしてしまうのですが、今回は雑草だまりのプランターなのでそのまま放置していました。
4月中旬に、総状花序が目立つようになっていましたので記念写真に。
四月末には複数の花茎が立った大きな株になって、一株の中に、既に花が終わり果実が出来上がったものから、まだ花を付けているものまで通して観察できるようになっていました。
5月連休中、草取りをしようとして、果実の鞘に触れた瞬間、パチパチパチッと鞘がはじけて、鞘ごと視界から消えてしまうか、またはくるくると巻いて種をはじき飛ばした鞘だけが小果梗に引っかかるようにして残りました。
鞘は複数の細胞層組織から出来ていて、外側と内側の細胞種差で生ずる膨張圧差で(→内外層に膨張率/伸縮率の差が出来るため)一瞬にして、割れた鞘を巻き込みながら中の種をはじき飛ばします。その瞬間は肉眼では追いかけられません。
そこで、まだ残っている鞘を一つ、ハサミで小果梗から切り取り、シャーレの中ではじけさせてみました。
その鞘には10個の黒い円盤状の種が入っていました。種にはエライオソーム(白い部分)が付いています。
エライオソームはアリの好物で、餌にするため種ごと巣穴に運んで行って食べますが、残りの発芽能力のある種は外に捨てに行きますので、ムラサキケマンは、まず自分で種をはじき飛ばして散布し、それをさらにアリに運んでもらって移動距離を稼ぐという勢力拡大戦略をとっているのです。
余談ながらスミレも、やはりエライオソームの付いた小さな丸い種をアリに運んでもらいますが、鞘がはじけても、自力で種を飛ばして飛距離を稼ぐことは出来ません。
植物運動の仕組みには色々ありますね。
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