トックリバチ(ミカドトックリバチ)誕生
6月中旬のこと。駐車場の片隅に積んでいたプラスチックコンテナの上の物品を下ろしたところ、格子状に成形されたコンテナ容器底の一角に小さな”トックリ”がありました。
トックリバチの巣です。
積んであった品物のわずかな隙間から出入りして巣作りしていたようで、全く気がつきませんでした。
トックリの口は開いていましたので、ちょっとのぞいてみましたが、それだけでは様子が分かりません。
あるいはもう既に放棄された古いものかと思って指で押してみると、底部を残してポリッと取れました。
そして、開口部から中に(相対的に)大きなガの幼虫らしきものが少なくとも3匹詰められているのが見えました。
巣作り進行中だったのです。やむなく、とりあえず、剥がれてしまった底部の円盤の上に、元のように載せておきました。
そして翌日の午前中、なんと口は塞がれ、近くに、1匹のイモムシが落ちていました。イモムシは触るとゆっくり動きますので、麻酔状態にした”生き餌”として運んできたものが、もうトックリの中に入らなかったものと思われます。
(底が抜けたトックリ画像をパソコン大画面で見ると、明らかにトックリの中に詰められていた幼虫と同種のもので、野菜の害虫「カブラヤガの若齢幼虫」らしいことが分かりました)。
中に入れようとしたり、入り口を塞いだりする作業でトックリが動いたらしく、載せただけの底部の円盤からずれてしまっていました。
親の来訪はもうありませんから、壊した”責任上“、円形に切ったプラスチックシートを瞬間接着剤で底部に貼り付けて補修しました。
そして成り行きを見届けるために、デザートのプラスチック空容器2個を重ね合わせて上部に空気孔を開け、吊り下げられるようにした、間に合わせの”観察ケース”を作って中に入れ、否応なしに目にすることができる玄関先の外壁に下げておきました。
それからちょうど一ヶ月後の7月10日お昼前、外出から帰ってきたら、玄関先の容器からかさかさと音が聞こえ、1匹のハチが白い液を排泄しながら動き回っているのが分かったのです。
ガラス板で蓋をして、我が家では初対面のトックリバチの誕生記念撮影をしてから蓋を外すと、元気よく”ブンッ”と、蒸し暑い梅雨の合間の晴れ間に飛び立っていきました。
親が準備してくれた食糧は完食したようです。無事に誕生して良かったです。
小さな昆虫の世界とはいえ、なかなか見事なものです。
トックリバチ(=ミカドトックリバチ)(スズメバチ科):
体長13mmほどで、黒色の体に胸部と腹部に黄色い帯状の模様、そして前胸背面に三日月型の黄色い紋が1対あります。
名前にように、泥土でトックリのような形の巣を作ります。徳利の天井に卵を1個だけ生み付け、ふ化後の幼虫の食糧として仮死状態にしたガの幼虫を詰めこみます。そして入り口を泥で固め、ふたをしたら”個室住居”の完成です。
孵化後、ガの幼虫を食べて成長し、約1ヶ月後には、羽化してトックリの壁を破って外に出てきます。
蜂の巣状の集合住宅ではなく、立派な個室住宅をあちこちに作るミカドトックリバチの親も大変でしょうね。成虫出現時期は6~9月。分布は日本各地。
カブラヤガの若齢幼虫:
若齢幼虫は、日中も野菜などの葉裏に集団でとりついていて、主として葉を食害しています。
老齢になると日中は土中に潜み、夜間に葉や茎を食い荒らし、食べ尽くすと根まで噛みきって食べてしまうので、家庭菜園の大敵であるネキリムシと呼ばれる害虫の仲間。
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