1)前置き:
春なお浅い能登半島輪島温泉2泊3日の旅の記録です。往復の航空券と輪島宿泊ホテル2泊セットのフリープランで、しかも時節柄格安料金ということでした。
現地の最低気温は0℃~1℃、最高気温は11~12℃と、春は名のみでまだまだ寒く、さらに風が吹くと体感温度はぐんと下がります。
ダウンのジャケットを着ていって正解でしたが、スギ花粉だけはそれなりに飛んでいて予想以上に悩まされました。
●今回、お目当ての一つは、つとに有名な「輪島の朝市」です。但し、買い物目当てではありません。
輪島といえばいうまでもなく、日本の漆器を代表する「輪島塗」の生産地で、市街中心地には輪島塗の工芸館、美術館、漆器店などがありますが、今回それらはすべてスルーして、朝市の”見学”です。
朝市のルーツは、文献記録上でも平安時代に始まり、今日まで1200年以上の歴史を持つ「物々交換市場」に由来するということで、その歴史を引き継ぐ現場の雰囲気をちらっと感じてみたいという程度の事ではあったのですが。
話がそれますが、2007.3.25に発生した能登半島地震で輪島市も大きな被害を受けました。そのため、今後想定される新たな自然災害の防災も含めた復興再生事業が、かつての歴史的景観を損なわないという配慮の元に企画され、それに基づいて周到な都市整備計画が進められた結果、街並みは一新されています。
少し古いガイドブックにあるような状況はもはやありません。
●2つ目の目的は、「白米の千枚田」です。
ここは「白米の千枚田」の指定名称で2001(H13)年1月29日、国の名勝に指定されています。そしてまた2011年6月には:世界農業遺産GIAHSジアス※にも認定されています。
《※Globally Important Agricultural Heritage Systems(GIAHS)世界重要農業資産システム(通称 世界農業遺産):世界的に重要な地域を国連食糧農業機関(FAO)が認定するもの。》
余談:
日本では「能登の里山里海」として輪島市域では「白米の千枚田」の他にも、〔輪島朝市、 輪島塗、御陣乗太鼓、海女漁、キリコ祭、あえのこと、時国〕などが、
また佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」が、2011年6月、次代に残すべき財産であるとして認定されています。)
(さらに余談ながら、世界農業遺産は世界各国にあり、先に訪れたモロッコでは「アトラス山脈のオアシス」が認定されています。)
●3つ目の目的は、”曽々木の名勝天然記念物を巡るハイキング周回コース”を歩くことで、強いて言うならこちらがメインだったかも知れません。
(以下の画像はクリックで拡大します)
2)日程記録:
1日目:
現地到着が午後4時過ぎで、外気温1℃という寒さ。ホテルに着いてから外出もせず、温泉に入浴した後、持参した資料をめくり明日の計画を考えながらお終いに。
2日目:
概要:
午前8時発(ホテルの送迎バス)★「朝市」→(徒歩)★「バス・ターミナル」→(路線バス)★「白米の千枚田」→(路線バス)★「曽々木口」→(徒歩)★「曽々木の名勝天然記念物を巡るハイキング周回コース」→★「曽々木口」→(路線バス)★ホテルに午後5時40分帰着、という1日フルコースです。
Ⅰ)朝市:
朝8時15分頃から朝市通りを覗きました。(この日は特に買い物はしません.翌日再訪しました。)
この時期はまだ観光としてはオフ・シーズンで、また朝市が一番に賑わうと聞いた時間帯(am10時頃)には早すぎたこともあって、新しい観光パンフレットの写真のように肩が触れあうほどの賑わいではありませんでした。
おそらく、というより、時代の流れに沿って当然、機能は様変わりした”日本の伝統的な市場”の風情を見学、実感したことでした。
→朝市通りを通り抜けて、旧輪島駅跡地に建設されたバス・ターミナル『ふらっと訪夢』(はじめは“血の巡りが悪いため”何だか分からなかったのですが、旧輪島駅のプラット・フォームをもじったものと理解しました)まで歩きます。
→バスターミナルから曽々木方面に、約2時間おきに出ている路線バスに乗車して約16分、白米(しらよね)で下車。
歩いてすぐのところに「道の駅・千枚田ポケットパーク」があり、そこから見下ろす位置にある観光スポット「白米の千枚田」の見学に。
Ⅱ)白米の千枚田:
千枚田は、高州山の裾が海へ落ちる急斜面にある棚田で、世界農業遺産認定時点では1,004枚あり、またその中で1番小さな田は0.2平方メートルということですが、古いガイドブックには実に2,146枚と書かれています。
また今回乗車したバスの車内音声ガイドでは、2092枚、1枚の平均は1.6坪との案内が流れていました。
☆朝9時半過ぎの、まだ斜めの光のおかげで棚田の陰影がくっきり浮かび出て、写真にはちょうど良かったようです。
☆道の駅『千枚田ポケットパーク』から千枚田に、そして氷の張った棚田も眺めながら海辺まで下りてみました。
2時間後、日が高くなった時には陰影が少なくなり、写真に撮るとフラットな感じになりました。
写真を撮って喜んでいる当方は脳天気ですが、実際にこの棚田の耕作、維持管理をしている農家などの皆さんは大変です。
これまで田植え・稲刈り時には広くボランティアを募って作業を行って来たそうですが、さらなる維持管理のため、現在は田の所有者を中心に組織された白米千枚田愛耕会による耕作・保存活動が行われていること、また千枚田オーナー・トラスト制度も運用されているとのことで、その現地も目にしました。
次の目的地、曽々木に行く路線バスは2時間後。海辺まで下りて、また棚田の周囲を一周したりしても1時間で十分。
したがって千枚田の見学だけでは時間が余りすぎました。もてあました時間は、人気の無いポケットパークで、“一人朝市”?をしていたお婆ちゃんのところへ。
“昨日は天気が悪く、とても寒かったけれど今日は良い天気で良かった”。“これはここ(白米棚田)で採れた稲わらを使った私の手造りのお守り。こちらは交通安全、そしてこっちは足腰丈夫のお守り”。“安産のお守り?!、要りません”。
他には竹の子の皮で作った大小様々のミミズクや民芸品など数種類も。
“輪島の朝市はきれいになりましたねえ”、“通りが広くなって、お客の数がまばらに見えるようになったよ”。“曽々木まで歩くとどのくらい時間がかかりますか”、“今日は天気がいいから海辺の眺めもいいし、歩くかい、2時間ほどかな、昼過ぎには着くよ、ただこの先歩道はなくなるし、車の通行は多いので気をつけないとあぶないよ”。
“2時間じゃあ、バスに追い越されるな、止めとこ”。イージーな判断即決。
交通安全と足腰のお守りを買ってから、やって来たバスに乗車、曽々木口へ。やはり歩くのは止めた方が良かったようでした。
☆浜辺から、オーナー制度耕作田、そして畦道に頭を出していたフキノトウを見ながらポケットパークに戻りました。最後はお婆ちゃんから買ったお守りの写真。
――続く――