ムラサキケマン、キケマン、ヤマエンゴサクなどエンゴサクの仲間/新しい植物分類学
いずれも4月中旬から下旬に山地で見かけたケシ科キケマン属の花です。
ケシ科キケマン属の植物は有毒の多年草で、数種類の仲間があります。中でもエンゴサクの仲間は姿がよく似ています。
●一番普通に見られるのはムラサキケマンと、花が黄色のキケマン/ミヤマキケマンです。
(なお、キケマンとミヤマキケマンの区別は果実の時期でなければ素人には難しいです。ミヤマと名前がついても、平地にも生えています。)
これらを除くエンゴサクの仲間は、おおよそ地域や環境などで住みわけていて、分布地域や最初の発見場所などからヤマエンゴサク、ジロボウエンゴサク 、エゾエンゴサク などが区別されています。
●ジロボウエンゴサク:
関東~九州の草地や山地などに生えて、花の付け根の苞葉は全縁(切れ込みがない)で、紅紫色の花付きも楚々としている。
●ヤマエンゴサク:
本州、四国、九州の山野の湿った林内、林縁に生え、青紫~紅紫色と花色に幅があり、通常は(付け根の)苞葉に切れ込みがあり、ただ葉の形はの変化が激しく、どれが標準的とはいいがたい。
●エゾエンゴサク:
北海道から東北地方の日本海側山地の湿った林内、林縁に生えて、青色の花が美しく(花の下の)苞葉が長楕円形で切れ込みはない。
これらは大きな目安にはなりますが、同一種でも変異が多く、素人にはなかなか判断、見分けがつきません。
今回同じ山域で見かけたものはヤマエンゴサクかと思いましたが、花色や付き方、また葉の形状などに違いがあり、同じ種かどうかも分からないので“エンゴサクの仲間”、としました。
ともかく、きれいな花には毒があります。
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素人のメモ:
単なる趣味で雑草の花を見て、きれいな雑草の花だな、で終わりでも十分ですが、名前が分かればなお良いかと図鑑やネット情報で検索して見るのですが、分からないこともよくあります。
素人の立ち入る領域ではありませんが、植物分類学の歴史は、【リンネ(Carl von Linne)の時代の博物学的な植物形態分類学】から、”進化”を考慮した系統的関係による分類体系の【新エングラー体系】になり、保存された膨大なタイプ標本との整合性を維持させるため、現在も分類体系として使われ続けています。
一方、科学の進歩に伴ってその後1980年代には被子植物の分類体系の一つとして【クロンキスト体系】が提唱されました。
さらに1990年代になるとこれまでのマクロ形態的な分類体系から、ミクロなゲノム解析、すなわち、2003年に完成したヒトのゲノム全塩基配列解析に見られるように、最新のゲノム解析技術を用いた分子系統学が大きく発展してきました。
そして現在、被子植物の新しい分類体系としてこのミクロなゲノム解析から実証的に分類体系を構築するAPG植物分類体系による研究が盛んになり、学術先端分野はすでにAPGの体系に移行して、2009年には第3版(APG III。書誌)が公表されています。
また一般生物学専門書として「新しい植物分類学」等の書籍も出版されています。
植物の分類体系に限ったことでは無く、「生物の分類」学そのものが昔習ったことから随分変わってきたようです。
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