マダガスカル固有種”ジラフビートル”(キリン クビナガ オトシブミ)♀
マダガスカル旅行記
●余話:
ジラフビートル”(キリン クビナガ オトシブミ)*:
実は、マダガスカル旅行最終日に訪れたペリネ特別自然保護区で、もう一つ、期待していたことがありました。
オトシブミという昆虫がいます。日本にも22種(23種)が生息しているということで、その一つヒメクロオトシブミだけは観察したことがありますが、他には見ていません。
そして、それよりもここマダガスカルに、いる”ジラフビートル”のほうにいっそうの興味を引かれたのです。
この森に棲むという固有種の昆虫、”ジラフビートル”(世界一首の長い、キリン クビナガ オトシブミ)です。
インドリ探索に出発する祭に、出来たらジラフビートルを見たいが、どのような植物にくっついているのか、またその植物が生えているところを通過するなら教えてほしいと頼んでいたのです。
現地ガイド氏の答えは、これから少し登って標高が高くなった山の方で、特定の樹種が生えているところに、ちょうど今の季節、まず間違いなく、いる!というのです。
ただ今回はインドリ探索が主目標ですから、その願いは当然後回しです。
そして首尾良くインドリ観察を終えての帰り道、ガイド氏の直ぐ後について山道を探しながら下ることに。
しばらくしてガイド氏が立ち止まり、この木にいるはずだ、と1本の木を指さします。
見上げる樹木の幅広の葉裏に点々と虫食い穴が光に透けて見えました。葉を囓った跡です。
しかし残念ながら見渡した範囲では”囓り主”は見当たりません。
他の人達はどうかしたのかと待っています。やむなくそのまま下山を続けます。
歩きながら、ガイド氏の言うのに、ここに3種ほどあるノボタン科の植物を食葉樹としていて、一番好むのは先ほど見かけた幅広の葉の木だと。
そしてしばらく行くと、今度は歩きながら脇に生えていた葉幅の狭い木を指さして、この木にもつくのだが、という。
通る人の邪魔にならないよう脇に入って、やはりまばらに虫食い穴のある葉裏をひっくり返してみたものの見つかりませんでした。
急いで後を追って下ります。そしてもうダメだなとあきらめていたところ、先頭を行くガイド氏が、後続のアシスタントガイドに何やら話した後、急に横手の斜面樹林の中に駆け上がっていきました。
それに気づいた人は、どうしたんだろうと声にしていましたが・・・・
そのまま全員予定の時間に出発地点に戻って、少ないトイレを順番に済ませたり、この後の長いバス乗車に備えて身支度をしたりしていたその時です。
あのガイド氏が息をはずませながら、駆け戻ってきて、目の前で重ね合わせた手の平をそっと開くと、なんと食葉樹の葉1枚と、そこにつかまっている「ジラフビートル」がいるではありませんか。
”すぐに飛ぶから写真は早く”、といわれ、急いで撮って、一度飛び立とうとして地面に落ちたのを、
教えられた近くのノボタン科樹の葉に載せて、もう一度写真撮り直し。
●画像はクリックで拡大します。卵があるのでしょうか、大きな腹部です。
しばらくして上空に飛び去っていきました。
(全く思いもよらないことで、ガイド氏のホスピタリティに心から感謝したことでした。去り際に、写真はちゃんと撮れてから、ジラフビートルは大空に飛び去ったことを告げました。彼も、にこっと笑ってくれました。)
なお、今回の個体は首が短く、触角の形状から♀のようです。(ちなみに♂はずっと首が長く、触角にはごく短い櫛歯がまばらにある櫛歯状です。)
後日その写真を眺めて、あらためて(日本各地に分布する)「ヒゲナガ オトシブミhttp://www.insects.jp/kon-otosihigenaga.htm」に、大きさも形姿もよく似ていることに感心しました。
とても良い旅の想い出になりました。
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※余話の余談:
*和名「キリン ゾウムシ」として解説された文庫もあります。
『千石先生の動物ウォッチング ガラパゴスとマダガスカル』 千石正一(著)岩波ジュニア新書(2003/2刊)
はじめは、”虫”の姿だけに視線がとらわれていました。あとで落ちついて写真をながめると、最初の画像に、はっきりと昆虫「オトシブミ」を特徴付ける、”葉の切り方”が写っていることに気がつきました。
オトシブミ(の仲間すべての)♀は、その名前の通り、若葉の一部を切り取って、直径1cm、長さ2.5cmほどの筒状に巻きながら通常1個の卵を産みつけた”揺籃”:(オトシブミ)を作ります。
出来上がった揺籃は切り落とされて地面に落下します。
その中で卵が孵化して幼虫になり内部を食べながら成長して蛹になり、成虫になって出てくるのです。
**オトシブミについて解説記事があります。
http://www.d1.dion.ne.jp/~k_izawa/otoshibumi.htm )
● 『オトシブミ観察辞典』 櫻井一彦、藤丸篤夫著、偕成社(1996.7.1刊)
● 『オトシブミ ハンドブック』 安田守・沢田佳久/著 文一総合出版(2009.5.30刊)
***そして何よりお勧めは、実際に、ジラフビートルの雄同士が、長い首を使って闘った後、勝者が雌と交尾して、共同して葉を丸め揺籃を作る様子を紹介したビデオです。
興味がおありでしたら次のURLをクリックしてご覧下さい。(3分15秒)
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=CN-WjdA6uUo
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