冬のミヤマシキミ、ヒサカキ、アセビ、スイカズラ(忍冬)&忍冬文
冬の木の実など雑記です。
●ミヤマシキミ(ミカン科):
1月中旬の山地で、めぼしいものが他に見当たらない冬枯れの林床に群落を形成していて、鮮やかな緑の葉と赤い実がひときわ目立ちました。
赤い実はきれいですが有毒で、スキミアニン、ジクタムニンなど、強い痙攣性の有毒アルカロイドを含むため食べられません。
昨今、各地域で鹿の食害により全滅する山野草や高山植物、樹木などが自然環境上も大きな問題になっていますが、このミヤマシキミは鹿などに食い荒らされる心配がありません。
(なお花の画像は過去ログ2013.4.23掲載のものを再掲)
本種は常緑の低木で葉は茎に互生し、茎の上部に集まります。
枝先に円錐花序をつけますが、雄花と雌花をつける株は異なります(雌雄異株)。
花弁は4~5枚。果実は有毒で、2~5個の核をもつ球状の核果で、核には1個の種子があります。
名前の由来は、葉がシキミ(別種)に似ていることから。
余談:
なお、仏事に使用されるシキミ(シキミ科)はミヤマシキミと葉がよく似ていますが、別の植物です。
シキミという名前の由来は諸説ある中で、「悪しき実」からという説もあるように、特に果実には強い毒性(種子にアニサチンなどの有毒物質)がありますのでこちらも口には出来ません。
●ヒサカキ(ツバキ科):
1月下旬の里山園地林間で数株を見かけました。葉がずいぶん食害されていました。
葉がサカキに似ているように思いましたが、後で樹木図鑑を調べて、ヒサカキと分かりました。
また、枝にぽつんぽつんと干からびた液果が残っていて、雌株と分かりました。
この時期にはほとんどの実は鳥に食べられることによって、種子散布が行われています。
横に長く伸びた枝には、暗紫色の萼片に包まれた冬芽(丸い花芽)がたくさん並んで付いていました。
ヒサカキ(姫榊):
本州(岩手、秋田以南)~九州の山地に生える高さ4~6mになる常緑広葉小高木で、雌雄異株(と、手元の図鑑にありますが、両性花が見られるのではっきりしていない、とされている情報もあります)。
葉は濃い緑で光沢があり、縁に緩やかな鋸歯(ギザギザ)があって互生しています。
葉腋に雌花はつり鐘形で直径2.5mmほどの小さな、また雄花は壺形で直径5mmほどの5弁花を1~3個束生します。
開花期は3~4月。花は下向きに咲き、独特の臭気があります。また萼片は暗紫色で5個あります。
雌株は10~12月に直径4~5mmの球形で、黒紫色に熟した液果をつけます。
冬には(早春の開花に備えて)暗紫色の萼片に包まれた丸い花芽をつけています。
余談ながら、神棚にサカキ(がない時)の代用として使用されています。
●アセビ(ツツジ科アセビ属)
1月下旬の里山公園地林縁に自生している株を見かけました。
アセビは昔から鑑賞用に公園樹や庭木としても好んで植栽される常緑低木で、また有毒植物であることもよく知られています。
早春から釣り鐘型の花を咲かせ、春の到来を実感させる植物です。
このため花芽の準備は早くからはじまり、夏には翌年の蕾ができ、秋には実が生ります。
冬のこの時期には、早春の開花を待つばかりになった花序ができています。
本州(宮城県以南)、四国、九州に自生分布しています。多くの草食性哺乳類は本種を食べるのを避け、食べ残されています。
●スイカズラ(別名ニンドウ、金銀花)の果実:
車も通る道路脇の民家の生け垣に絡みついて、剪定された後に飛び出していた枝先に、干からびて硬くなった数個の食べ残しが見つかりました。
警戒心の強いヒヨドリが見落としたのでしょう。
半常緑つる性木本で、花期は5~7月。秋に粗毛が密生した枝先葉腋の花のあとに結実します。
果実は直径5~6mmの球形液果で、2個ずつ並んで付きます。9~12月に黒く熟し、味は苦みと淡い甘みがあるそうです。
中に暗緑褐色で長さ3mmほどの広楕円形の種子が数個入っています。
今回は5個ありました。
(2月5日撮影)
スイカズラ(忍冬)は近くのフィールドに普通に生えていて、立木に絡みついたり、時には民家の生け垣に取りつき、”迷惑ツル植物”になったりしています。
ただ花の時期には芳香とともに”金銀花”が目立ち、大目に見られることも。
秋、荒れ地に自生して這い回っている枝に黒く熟した実は、冬の今頃には、ヒヨドリやムクドリなどにすっかり食べられています。
余談【忍冬唐草/忍冬文】:
先に書いた忍冬の記事に“忍冬唐草”のコメントを頂きました。浅学のため知りませんでしたが、忍冬は唐草模様の代表格だったのです。
唐草模様と言えばすぐ思い起こすのは大判の風呂敷。
あの緑色に白抜きの唐草模様の大風呂敷で、お酒の一升瓶なども包んで持ち運ぶことができる万能グッズ。
そしてあらためて身の回りのいろいろな工芸品や日常用の品物などに描かれているいろいろな“唐草模様”とは、なんぞやということで、少しばかり遅まきながら“お勉強”を。
「唐草模様」というデザインは、植物の茎や蔓が描く波状の連続文様のこと。
そして、「つる性植物」が絡み合うさまを図案化した(その元は中国(唐の国)から伝わったといわれる)紋様は、主題となるつる植物によって“忍冬”唐草(忍冬文)、“葡萄”唐草、“宝相華”唐草、“蓮華”唐草などと呼ばれて、多数の種類がある唐草文であると。
忍冬唐草模様は飛鳥時代の瓦(軒の先端に付く宇(のき)瓦(軒平瓦))の模様としても有名という。
忍冬文:
(広辞苑(電子辞書版)の図を参照)
なお、唐草文様には、茎や蔓だけではなく、花や果実、動物などを絡めた文様も含まれているということです。
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