ウラナミシジミ(さまよえるチョウ)
●ウラナミシジミ(シジミチョウ科):
快晴の日中、気温は10月初旬の暖かさになった栃木県下の里山で見かけた個体です。
まばらに生えたセンダングサで吸蜜したり、翅を広げて暖をとったり、時にはすぐ近くにいた別の個体(ペアと思いますが)と追っかけ合いながら舞い上がったりして、まだ元気に活動していました
本種は、翅の裏面に黄褐色と白灰色のさざ波模様がある小柄のチョウ。
幼虫はまだ見たことがありませんが、栽培豆類を食害する害虫として、時には防除対象になったりします。(ただ、言ってみれば、モンシロチョウ(幼虫アオムシ)も、キャベツの大害虫ですが・・・)
定着地では年5~6回以上の多化性です。
そして、初夏から秋にかけて、分布地から食草を求めて北へ北へと移動して行き、時には北海道まで北上します。※※
しかし成虫は(暖地以外では)越冬できないで、冬の訪れと共に死に絶える、『たくましくも哀しいさまよえるチョウ』、と手元の図鑑にありました。
(参考):
ウラナミシジミは現在検疫有害動植物として取り扱われています。※
若齢幼虫は栽培マメ類の花蕾や花芯を食害し、やがて莢内に食入するため、幼莢で落下したり不稔実や傷果となったりして収穫に被害を与える害虫として扱われます。
とくに成虫の発生期と開花期が一致する夏播き、年内収穫、次いで夏~初秋播き、晩秋~春収穫の場合の被害は大きくなるため防除対策が必要な場合もあります。
※防除法:
・アズキ、エンドウ、インゲンマメ、ソラマメではウラナミシジミに対する登録農薬があります。
・シルバーマルチ(農業用多層フィルム)で被覆することにより成虫の飛来を回避する方法も行われます。
・国内分布域は、房総半島南部以南、四国、九州、南西諸島。
・寄主(食害)植物:いんげんまめ、あずき、ささげ、えんどう、そらまめ、まめ科牧草。
・成虫の前翅長は17mm 内外で雄の翅表は光沢のある青色で、外縁は細い黒褐色に縁取られています。雌は青色部が少なく外縁の縁取りは幅広い黒褐色です。
後翅の後端に黒い斑点が2つあり、2つの斑点の間には細い尾状突起が出ています。
翅裏は黄褐色で白灰色のさざ波紋があります。
・卵は淡黄色のまんじゅう形で表面に放射刻紋があります。。
・老熟幼虫の体長は15mm 内外で長楕円、平たいワラジムシ形で暗緑色~緑褐色、蛹の体長は7~8 mm となります。
・気温の上昇とともに北へ移動して分布を広げ、加害も見られますが、越冬はできません。
・卵は花、蕾、新芽などに1卵ずつ産みつけられます。卵期は4~5日。
幼虫期間は15 日内外、4齢を経過して食草の葉間や物陰、地表のくぼみなどで蛹化します。
蛹期は7日内外、越冬期の場合は2か月に及ぶこともあります。
※参照文献:
ウラナミシジミのPRA報告書 (平成22年11月 横浜植物防疫所)http://www.maff.go.jp/j/syouan/keneki/kikaku/pdf/uranami_pra.pdf
| 固定リンク
「昆虫」カテゴリの記事
- モンキチョウ(2021.02.22)
- ナナホシテントウ(2021.02.06)
- 越冬中のキタテハ(2021.01.28)
- ヤノナミガタチビタマムシ、フサヤスデの仲間(2021.01.14)
- ツバメシジミ、キチョウその他(2020.12.12)
コメント