ヒオドシチョウ(越冬個体)、ベニシジミ春型(2015/3)
●ヒオドシチョウ(越冬個体):
晴れて気温が上がった1日、里山公園のまったく人気のないハイキングコース林縁で交尾中のペアを見つけました。
止まっていた擬木と同じ色です。
(交尾中に)近寄りすぎたからでしょう、♀(左の大きい個体)が、右の♂(翅を閉じたまま)をぶら下げて飛んで行き、(さほど遠くまで飛びませんでしたが)、堆積した枯れ葉の地面に降りました。
飛んでいる時には雌の黄色い表翅色が目印になって目で追えますが、枯れ草の地面に下りるとほぼ完全な保護色で、見つけるのが大変でした。
また飛ばれないように、数メートル先から望遠ズームで撮影。
その先で、今度は素速く飛び回る複数の個体を見つけました。
しばらく腰を下ろしてしばしの間観察。
♂は林縁や道の開けた地面の縄張りの周囲を行ったり来たりして、ほかの♂が近づくと追い払い、♀が来るとすばやく追いかけて絡み合いながら配偶行動をおこしていました。
なお画像は複数の個体ですが、同じ個体が含まれているかどうか識別できません。
※ヒオドシチョウ(タテハチョウ科):
大きさ:60~70mm。年1化性のチョウです。
越冬した成虫が産卵した卵から孵化した幼虫は主にエノキを食葉樹として生長し、初夏(6月中旬~7月)に蛹から羽化して成虫になります。
新成虫は、その年そのまま越冬し、翌春に繁殖活動を行って命を終えるというライフサイクルです。
このため春先に見られる個体は越冬した個体です。
初夏に見られる新鮮な個体の翅は、鮮やかなオレンジ色に黒い紋と外縁の黒帯に青色の斑紋がある美しいものですが、越冬個体の翅は例外なく色褪せてボロボロになっていて、長い成虫期間耐え抜いた歴戦の生涯が忍ばれる姿です。
なお成虫で越冬する他のタテハチョウ仲間同様、裏翅は地味な茶褐色で、冬枯れの自然環境風景にとけ込む、一種の擬態のようです。
近くの平地で見かけることはありませんが、幼虫の食葉樹エノキが生える里山など(時には市街地でも)自然豊かな環境では普通に見られるようです。
夏から見られる成虫はあまり花には来ないで、林地のクヌギの樹液などに集まるそうです。
★余談追記:
エノキを食葉樹とする蝶の幼虫は日本に6種類、国蝶のオオムラサキ(ただし法的なものではなく日本昆虫学会が選んだもの)、ゴマダラチョウ、アカボシゴマダラ(人為的に放蝶されたといわれる問題種)、テングチョウ、ヒオドシチョウ、よく似たシータテハがいます。
このうち前の3種類は幼虫で越冬、後の3種類は成虫越冬します。
いずれの種もエノキの葉を食べる幼虫期はオーバーラップしますので、大型で繁殖力の強いアカボシゴマダラは他の在来種との競合が懸念されています。
●ベニシジミ:
草原にいた翅表の橙紅色がきれいな新鮮な春型個体です。
本種は一年に何度も発生する多化性のチョウで、 3月から11月頃まで見られますが、季節によって翅の色合いが違ってきます。
3~4月に発生する“春型”ベニシジミの翅表面はきれいな明るい橙紅色ですが、5月頃から9月頃までに出現する“夏型”になると、全体的にかなり黒みが強くなり、きれいさは今ひとつに。
そして秋に発生する個体はまた“春型”に近くなります。
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