カツラの雄花と雌花、エノキの雄花と両生花
ごく小さかった庭のツリバナ(落葉樹)の冬芽も3月末には葉芽の展開がはじまり、その後を追うように、葉腋からのぞいた花芽、短い集散花序も日毎に伸びて、丸い蕾をたくさん付けて下垂をはじめています。
季節は本当にあっという間に進んでいきます。
話変わって。
以前から、一度は観察したいと思っていた公園樹のカツラ、そしてエノキの花。
花期のタイミングを逃さず、また注意して見なければ気づかない種類の木の花で、結局、今までずっと花期が終わってから、忘れていたことを悔やんでいました。
今シーズンも、ツリバナの葉の展開に気づいたその日だけは、今年こそ観察をと思ったのですが、やはり忘却の彼方へ・・・
そして昨日、なぜか、アッそうだった、と思い出して、急ぎ、晴れ間がのぞいた公園へ。
●カツラ:
カツラは冬芽の観察はしていましたが、花は一度も見ていません。(見れども見えずでした。)行ってみると、時、既に遅く、花期は過ぎていました!
みずみずしい新葉がきれいに展開していて、葉の展開に先立って咲くという花は雄花、雌花ともすっかり終わっていました。
しかし、がっかりしながらも往生際が悪く、“上を向いて、全部で10数本ある雄株と雌株の樹木を確かめながら辿っていくうちに、何と見つかりました!
ほとんど残骸に近くなっていた雄花と雌花、また少しは”花“の雰囲気が残っている雌花をつけた雌株があったのです。
あと数日遅かったら今年もアウトになるところでした。
・雄株/雄花:
雄株樹木には果実(袋果)の残骸がありませんから見分けがつきます。
10数本ある樹木を辿った最後の雄株で、他の雄株では見られなかった雄花の残骸が見つかりました。
新葉が展開する前に開花した雄花は、雌花同様萼も花弁もありませんが、細い花糸の先に、きれいな紅紫色の葯が付いた雄しべがたくさんあり、小さな紅紫色の花のように見える花です。
しかし、すっかり展開した葉脇に残っていたのは、細糸の先ぶら下がった黄土色に変色して干からびた雄しべの残骸でした。
雰囲気が分かったことだけでもOKとしました。
・雌株/雌花:
樹によってずいぶんと個体差が見られました。
最初に雌花残骸を見つけた雌株は、(昨シーズン出来た果実(袋果)が開裂して中の種が放出された後に残って茶褐色に変色した)鞘が枝にポツン、ポツンとまばらに残っている樹でした。
一応、その花の残骸を写真に。
更に次の樹を探して行くと、やはり開裂袋果の茶褐色鞘残骸が驚くほど大量に残っている雌株がありました。
この樹も新葉はすっかり展開していましたが、葉腋に咲いた(やはり萼も花弁も無い)雌花が、少し色あせながらもまだ多数残っているのが見つかりました。
葉が出る前に咲く雌花は3~5個の雌しべから出来ていて、柱頭は太い糸状できれいな紅~紫紅色ですが、見頃を過ぎた花は茶色を帯びてきれいさは今ひとつでしたがやむを得ません。
なお雌株には雌花のほかに、雌しべと雄しべの両方がある両性花がつくということですが、今回は分かりませんでした。
まあ、物覚えが年ごとに、さらに日毎に悪くなるものにとっては上出来の観察でした。
当地では3月下旬から4月初めが開花時期のようですが、ともあれこれで念願達成です。
※カツラ(単型科カツラ科カツラ属):
カツラは雌雄異株の落葉高木で、雄花と雌花そして両性花があります。
花期は4月頃で、葉が出る前に、葉腋に、基部は苞に包まれ、花弁も萼もない小さな紫紅色の花を開きます。
雄花には雄しべが多数あり、花糸は極めて細く、葯は線形で紫紅色です。
雌花は3~5個の雌しべから出来ていて、柱頭は太糸状で紅~紫紅色です。
小さな花で、見上げるような大木の場合は、開花に気付かないことも多い樹木の花の一つです。
近くに自生した樹木はありませんが、散歩コースの公園には10数本植樹され、大木になっています。
分布は日本各地と中国。
●エノキの花(雄花と両生花):
エノキは陽樹といわれるように日当たりの良い環境でしか十分生長出来ません。
エノキは雌雄同株で、1本の木に雄花と両生花が付きます。
公園に数本植樹されていますが、林地に他の高木と混植されて、他の高木で周囲を覆われるようになった木は日照不足で樹勢が衰えてきて、かなり枝枯れもしていて、ちょうど行った時にはその剪定作業が行われている最中でした。
新葉の展開と同時に咲いた花付きの枝も伐採されて、樹下に積み上げられ、既に萎れはじめていましたので、観察はムリ。
公園の別の開けた場所にも1本あって、こちらは見上げる高木に育っています。
若葉と同時に開花した雄花と両生花を含む全体で、もわーとした薄黄緑になっているのを撮るだけにして(こちらは高すぎて細部観察はムリ)公園を後に。
エノキは公園植樹以外に、日当たりのよい空き地、荒れ地、また農道端などに普通に自生しているので、観察には支障ありません。
その様なわけで、帰り道に自生している小木の観察にしました。
※エノキ(榎)(ニレ科エノキ属):
丘陵から山地の日当たりの良い場所に生える落葉高木。
日陰では育たない陽樹。公園樹にも利用されています。
雌雄同株で淡黄白色の小さな雄花と両性花をつけます。
葉の展開と同時に開花します。
雄花は本年枝の下部に集まって付き、両性花は上部の葉脇に付きます。
雄花の花被片(花弁と萼の区別がはっきりしない植物の花弁と萼の総称)は淡褐色のため目立ちませんが4個、そして雄しべ4個が対生していて、その中心部には白い綿毛が密生しているため白く見えます。
両性花には子房の下に雄しべがあり、花被片4個と、雄しべ4個が、また雌しべが1個あります。
そして花柱は”ハ”の字型に2裂して柱頭には白い毛が密生していてよく目立ちます。
花後子房が膨らんで果実が出来ます。
果実は緑色の直径6mmほどの球形核果で、秋に赤褐色に熟します。
花期は4~5月、分布は本州以南。
| 固定リンク
「植物」カテゴリの記事
- ヤマアジサイ開花、ナミテントウなど(2021.05.27)
- ヘメロカリス開花/ 明日(5/26)は皆既月食(2021.05.25)
- フヨウの葉を巻くハマキガ幼虫と成虫(ワタノメイガ)(2021.05.22)
- クロネハイイロヒメハマキ(成虫/幼虫)(2021.05.21)
- バラシロヒメハマキ/不明のハモグリガ幼虫(2021.05.14)
コメント