田起こし/田んぼを紅色に染めたイヌタデ
●耕運:
10月初め頃から、晴天の日には近郊のところどころの田んぼで“秋起こし(耕運)”の作業が行われています。
(収穫後の)秋起こし作業は、 寒地では10月中旬頃まで、暖地では11~12月上旬頃までに行い、平均気温15℃くらいまでが目安なのだそうです。
作業の内容は田んぼによって様々で、稲株や稲ワラを田んぼの土に引き込む「荒起こし」や、稲わらを焼却して黒く見える田んぼなどがあります。
・【余談】
田起こし作業により
1)土の中に空気が入って乾燥しやすくなり、微生物による有機態窒素の分解が促進され、植物が吸収しやすい無機態窒素に変化する「乾土効果」が得られる
2)肥料をまいてから田起こしをすれば、土に肥料をまんべんなく混ぜ込むことができる。
3)有機物を鋤き(すき)込む
稲の切り株や稲わらなどの有機物を鋤き込み、この有機物を微生物やミミズなどが分解して、養分を作り出し、これが窒素・リン酸・カリその他の微量成分も含まれる有機質肥料になる。
4)土を砕いて団粒化する
細かく砕かれた土と、鋤き込まれた植物の腐植がくっついて、直径1~10mmの小粒からなる団粒構造が形成される。
団粒構造の土は、水や空気が隙間を流れるので排水性・通気性が良くなり、一方では、水や肥料を蓄えるので、保水性・保肥力が良くなり、稲の育成に理想的な土となり翌年の稲作の作柄に貢献する。
5)雑草を抑える:
雑草の種は主に地面下1~3cmの浅いところから発芽するので、田起こしによって雑草の種子を深く埋めることにより、雑草の発生を減らすことができる。
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●イヌタデ、田んぼを紅色に染める:
11/14午後3時前、田起こしが行われていた地域の一角にある大きな1枚田が、早くも傾いた西日に照らされて紅色に見えるのにびっくりして足を止めました。
稲刈り後の無人の田んぼといえども他人様の私有地ですからむやみに入り込むことなどできません。
目視できる近くにおなじみのアカマンマ(イヌタデ)が少しまばらに生えているのを確認してから望遠で覗いて見ると、間違いなくイヌタデの一大群生地になっていたのでした。
(画像はクリックで拡大します)
こんな光景は初めてです。
足元にあるイヌタデを採取して持ち帰り、確認。
※イヌタデ(タデ科イヌタデ属)の一年草。
道ばたや畑地などにごく普通に生える1年草で、草丈は20〜50cmほど。
同じタデ仲間のヤナギタデは茎に辛味が有り、刺身のツマなどに利用されるに対し、本種は辛味がなくて(犬には失礼だが、)実用には役立たないという意味で「イヌ」をつけて「イヌタデ」と名付けられたとのこと。
昔から、ままごと遊びなどで、赤い小さな花や果実を赤飯に見立て、アカマンマ/アカノマンマと呼ばれてきた。
茎は普通、赤みを帯び、下部は地を這う。
葉は互生し、広披針形~披針形で先はとがる。
花序(花穂)は長さ約5cmで、紅色の小さな花(花被)を多数つける。
花のように見えるのは萼で花弁はない。まれに白色の花もある。
托葉鞘は長さ7~8mmの筒形で、ふちに長い毛がある。
花被は長さ1.5~2mmで5深裂し、花のあとも残って果実(そう果)を包む。
花は咲きはじめから最盛期そして花後もそう果を包んで残って、見かけ上はあまり変化しないため長期に花が咲いたままのように見える。
花穂を指先で揉むと中から光沢があり、3つの稜がある丸い形で黒色のそう果が出てくる。
花期は6~11月。分布は日本各地。
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●そして翌日(11/15)午後3時半ごろ、再び通りかかったところ、なんとすっかり耕運されていて、再びビックリ。
目を凝らしてみると、乾いた土の表面に紅色が混じっているように見えてました。
(画像はクリックで拡大します)
今後も春先まで何回か耕運作業は繰り返されるようですから、こんなに”大量のイヌタデ種まき”があっても、さして問題にならないのでしょうね。
ともあれ、今回の観察はまさに千載一遇の機会だったようです。
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